「今月もたくさん入れたのに、なんで残らないんだろう」
夜、予約画面を閉じてため息をついた。
そんな1人サロンの店長さんの話を、最近よく聞きます。
施術は丁寧。指名もそこそこある。
口コミの星も悪くない。
なのに、月末に通帳を見ると、思ったほど残っていない。
まつエクの平均客単価は、いま 5,299円(ホットペッパービューティーアカデミー調べ)。
つけ放題100本でも3,000円を切るお店が、すぐ隣に並んでいます。
最初に値下げを始めた頃から、価格はもう4分の1まで落ちました。
5年、10年かけて、じわじわと。
値段を下げると、新規はちゃんと来てくれます。
クーポンを見て、はじめましての方が予約をくれる。
その瞬間は、嬉しい。
「やっぱり下げてよかった」と思える。
でも、3ヶ月後。
その方の名前を、もう予約画面で見かけない。
「次は別のサロンの方が安かったので」
ホットペッパーの口コミ欄で、そう書かれていたりする。
新規は来る。
でも、また居なくなる。
別の新規を呼ぶために、また値下げをする。
そのループの中にいると、ふと気づきます。
「私、何のために朝から立ちっぱなしなんだろう」って。
値下げで集めた人は、値下げで去っていく。
それは、お客様が悪いんじゃなくて、
「安さだけ」で結ばれた関係は、もっと安いところに上書きされる ── ただそれだけのことなんですよね。
値下げで集めた客は、値下げで去る。指名で来た客だけが、価格を超える。
これは、まつエクに限った話じゃなくて、
ネイルでも、エステでも、整体でも、パーソナルジムでも、
「お一人で回している店」の構造はだいたい同じです。
ここで、ちょっとだけ数字の話をさせてください。
業界では昔から「5:25の法則」というのが知られていて、
離脱率を5%下げるだけで、利益が最低でも25%戻ってくる、と言われています。
新規を1人連れてくるコストは、既存のお客様にもう一度来てもらうコストの 5倍 かかる。
これも、ずっと言われている話です。
つまり、
入口(新規)を広げようとして消耗するより、
裏口(離脱)を5%だけふさぐ方が、ずっと早い。
毎日8人いれて、月に20日働けば、客単価5,000円でも月80万円が見えてきます。
でも、その8人のうち2人が「次回も指名で」と言ってくれるなら、
来月、新規枠を1人減らして、息をつける時間が作れるかもしれません。
集客の問題は、入口じゃなく、裏口にあることが多い。
桶に水を注いでも、底に穴が空いていれば、いつまでも溜まらないんです。
値下げをやめる、というのは、
「値段を上げる」ことよりも先に、
「次もまた指名で来てくれる、たった1人のお客様」を、ちゃんと見送ること。
鏡越しに「次いつ来られますか」と聞ける関係。
LINEで「あの時のデザイン、また同じでお願いします」と言ってもらえる関係。
そういう小さな積み上げが、価格を超えていきます。
まつエク市場は、いま 1,179億円。
5年で最高値です(株式会社リクルート『アイビューティ白書』2024年)。
縮んでいる業界じゃない。
値下げに飲まれていく店と、そこから降りる店に、分かれているだけ。
「もう値下げ、やめようかな」
そう思った日が、その店にとっての分かれ目だったりします。
値段を変える前に、整える順番が1つだけあります。
それは、いま来てくれているお客様の「次の1回」を、ちゃんと設計し直すこと。
自分のお店の今が、新規ばかりに偏っているのか、指名で回っているのか。
裏口が空いていないか。
そこを一度、目に見える形で確かめてみると、次の一歩が見えてきます。
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